HEROZ Tech Blog

日本将棋連盟公認「将棋ウォーズ」や、AIを活用したシステム企画・開発を行う、AI企業HEROZの公式テックブログです。

HEROZ ASK: なぜHEROZが今、新しいSaaS型プロダクト開発に挑戦しているのか

はじめに

こんにちは、HEROZ ASKの開発チームです。先日、私たちが新しく開発しているSaaS型プロダクト、HEROZ ASKの新バージョンがリリースされました。 heroz.co.jp

今回のポストでは、このプロダクトの開発に何故我々が注力しているのか、ビジネスとしての意義を説明したいと思います。

※技術的なこだわりポイントはまた別のポストで随時発信したいと思います

HEROZ ASKについて

いつでも何でも悩んだときに聞くこと(ASK)ができる、あらゆる質問に答えるAI駆動のSaaSプロダクトです。Always Seek Knowledgeという意味が込められており、蓄積された知見をいつでも探すことができます。簡単に言えば、ビジネスの現場で使えるChatGPTを目指しており、これまで十分に活用されてこなかった暗黙知を有効利用することで、企業および産業のAIトランスフォーメーションを促進します。

そもそもHEROZはどのようなBtoB事業をやってきたのか

当社はこれまで、所謂ソリューション型のビジネスを展開して来ました。顧客の表面的な課題から、本質的に機械学習で解くべきイシューを発見し、そのモデルを高度なAIに関する技術力で実現することで、殆どが失敗に終わると言われるPoCの成功確率を極力上げられるようなプロジェクトを複数展開して参りました。一例として以下のような事例を公表させていただいております。

heroz.co.jp

heroz.co.jp

付加価値の高いプロジェクトを一件一件テイラーメイドで提供してきたため、多くのお客さまから感謝の言葉を頂いていることは有難い限りで、当社も本質的な課題解決の一助を担えたことをとても嬉しく思っていました。同時に、PoCで終わらせない高度なAI導入のノウハウを社内に蓄積し、AI業界の荒波を乗り越えてこれたことは当社にとっても代えがたい経験になっていたことは間違いありません。

しかしながら、当然このビジネスモデルも一長一短はあります。スケーラビリティに欠け、アセットが蓄積しにくいという課題を避けて通ることは極めて困難です。今後よりビジネスをスケールさせていくためには、「高度なAI導入ノウハウ」以上の、tangibleなアセットを蓄積していくことが不可避でした。

生成AIの登場と、Solutionとの両立

生成AIブームが来る以前から、当社は長らくこうした課題と向き合ってきましたが、ちょうど一年ほど前に、生成AIが登場し、市場を折檻し始めました。生成AIブームが過熱する昨今、従来のように顧客の課題をヒアリングしに行くと、「ChatGPTを使って〇〇がしたい」というご相談を多数頂戴することがありました。これは我々が5~6年前に深層学習ブームの時に経験した「ディープラーニングを使って〇〇がしたい」とそっくりです。手段と目的が混在し、本来ビジネス上の目的を達成するための手段として位置づけられる技術自体が目的になってしまっているケースが後を絶ちませんでした。

しかし、生成AIはあまりに汎用性の高く新しい技術であるがゆえに、試してみなければ分からない。ChatGPTはまさにそのような技術でした。そこで、様々なLLMに関連する技術をノーコードで簡単に試しながら、生成AIの業務適用を完食できるようなツールのニーズが強いのでは無いかと思い、このプロダクトの開発に一念発起し開発を続けて来た結果、今回のリリースに至りました。

HEROZ ASKが目指す開発の方向性

HEROZ ASKは、簡単に言えばビジネスの現場で使えるChatGPTですが、言い換えればノーコードで生成AIの可能性を試すことができるあらゆるDX推進者のための支援ツールです。ビジネスとしての方向性は他にも様々な仮説を持っていますが、ここではtech blogなので技術的な思想や開発の方向性について説明します。当然ながら様々なモダンな技術を使ってUI/UXも徹底的に拘って行く(今後も更新していく)方針です。一例を挙げると

  • フロントエンドにはReact、バックエンドにはDjangoフレームワークを採用し、効率的でパフォーマンスが高く、セキュリティに優れたSaaSプロダクトを実現しています
  • Azure OpenAI Serviceだけでなく、Microsoft Defender for Cloudなどの様々なサービスを採用し、セキュリティ面の様々な改善を行いました
  • LangChainのフレームワークを活用し、LLM関連の驚異的な技術進展にいち早く追随しています

特に、LangChainに関しては果たしてProductionに使うべきかどうか、様々な議論がなされています。メリットとしてはRAGやAgentに関する実装が豊富で、LLMの様々な機能を超手軽に活用することができます。一方、互換性の無い更新が為されることもしばしあり、本記事執筆時点でVersionが0.1.5と、いつになったら正式なVersion1.0になるのか、もしその時が来たらこれまでの開発は全て負債化してしまうのか、全く読めないというデメリットもあります。

HEROZでは、現時点ではLangChainはProductionに乗せるべき、という判断をしています。これは主に以下の理由からです

  • LangChainの実装が本家のLLM開発に影響を与えているような事象も散見され、最新状況のキャッチアップに一役買っている
  • LLMに関する技術進展が非常に高速かつ広範にわたる昨今、関連技術を簡単に使えるような実装が迅速に実現されるため、ASK上でいち早くLLMの最新技術を試してみることが可能になる
  • 特に、今後Multi-modalモデルが前提になって来ることが想定される中、いち早くそうした抜本的なLLMのアップデートに対応することができる

当然ながら世論も時々刻々変遷していると認識しています。当社はポジティブにこうした新しい技術を採用することで、ユーザに「驚き」を与えるような体験を提供することを目指します。

最後に

今後もHEROZは、Solution型の事業とプロダクト型の事業の両面と向き合いながら、新しいビジネスを実現して行く、という経営戦略的にも難しいテーマに挑戦していきます。生成AIという今後世の中に不可逆的に導入が進むであろう技術を扱いながら、こうしたテーマに取り組むことが出来るのは、まさに今しか出来ない貴重な経験になるはずです。今後も技術的にさらに踏み込んだ内容を発信して行きたいと思いますので本ブログをご愛顧いただければ幸いです。最後までお付き合いいただきありがとうございました。